「共鳴という言葉を聞いたことはありますか」

何かを信じた人間は不感だ。 

どこまでも不透明な人の心情、それはいくら情景が雄弁であろうと全くの透明にはなり得ない。
情景が語る、美しい旅の短編を此の場に。


 ーー以下本文よりーー


 旅人、といってもこのお客を示して言うときのそれは、ヘミングウェイや谷崎潤一郎と同様の性質で緩やかに生活の場を移していく、ある意味では根っからの旅人であり、俗に言う旅人とは少し違う。


「共鳴という言葉を聞いたことはありますか」
 巻き終えたスパゲッティを尚も無心で巻き続ける。その手を止めた彼女の発声に続くように、混ざり合う談笑が戻ってくる。


 石の壁に背を預け、細い街路樹に背を預け、私の寂しさは土の中へと還っていく。そこには人の言うような虚しさもなく、ただ風は吹き、川面は揺れ、太陽は西へと傾いていく、何かそういった事象と変わらないひとつになるのである。


彼女の信仰について、共鳴の話それ自体がそうであるとも言える可能性はさておき、私は尋ねたことがなかった。 

天使の番 /桜鬼

¥700

B6 

(F-18)波の寄る辺

テキレボ9WEBカタログ

@HanaOniTiriyuku